大田区生活支援付すまい確保事業を担当している米澤です。
以前は何度か自立支援センター目黒寮在籍中にブログを書かせていただきましたが、昨年1月からは「大田区生活支援付すまい確保事業」の担当に異動となりました。
この「大田区生活支援付すまい確保事業」では大田区在住の1年以上の高齢者を対象に転居に際しての物件確保のお手伝いと、転居後の見守り支援を継続して行っています。
さて今回は——――令和2年11月30日に「住宅確保要配慮者に対する居住支援」というテーマで、大田区居住支援協議会主催「職員及び関係者向け研修会」に、大田区居住支援協議会構成員として登壇しました。
当日は、特に住宅確保要配慮者の対応が多い職員の方など、数多く参加していただき
①不動産会社から見た居住支援の解決策
②居住支援相談の状況と緊急連絡先代行サービス
③大田区生活支援付すまい確保事業の内容・現状
④住宅確保支援事業の取り組み内容
以上4点の内容をそれぞれの立場の専門家が40分ずつ講演し、私も③についてお話しさせていただきました。
その中から少しご紹介いたします。
高齢者の住宅問題とは?
私の仕事である「大田区生活支援付すまい確保事業」は、「大田区内に1年以上」住んでいらっしゃる「65歳以上の一人暮らし」または「65歳以上と60歳以上」の高齢者世帯がお引越しをする際のお手伝いです。
今このブログを読んでいる方の中にはもしかすると、「今の65歳ってみんな元気だけど支援なんて必要なの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
実は体は元気でも支援が必要な方は意外とたくさんいるんです。
皆さんはお一人でお引越しをされたことはありますか?進学・就職・転勤・結婚etc…….人生の様々な場面で「引っ越し」というイベントがついてまわります。
そこで本事業にスポットを当ててみると、転居の理由の上位3つは
第1位 「取り壊しによる立退き」
第2位 「借替え」(低層階・家賃減額)
第3位は「生活保護での転宅」
となります。
一つの所に長年住み続け、願わくばそこを「終の棲家」と考えていた方がほとんどですが、物件の築年数によってはオーナーの意向により「取り壊し」となり、「立ち退き」を求められるケースがあります。
「取り壊しによる立退きだったら立退料も出るし難しくないんじゃない?」と思われるかもしれません。しかし、こと高齢世帯にとっては簡単な話ではないのです。 まずはこのグラフの入居制限の状況をご覧ください。
私もこれまでの人生で5回の引越を経験しましたが、年齢を理由に断られたことはありません。
しかし、高齢者の一定数がたとえ健康であっても、「高齢である」ことを理由に入居を拒否されることがあります。
人は誰でも病気や事故さえなければ60代70代80代と歳を重ねていきます。定年まで仕事を勤め上げ、これからは第2の人生を楽しんでいく時に
「住む家が無い」
「申し込んでも断られる」
この寂しさや悔しさは体験しなければ分からないと思います。
大田区生活支援付すまい確保事業の内容
ここからが本事業の出番です。
冒頭でも簡単に触れましたが、大田区では居住支援施策の一環として、「大田区生活支援付すまい確保事業」を実施しております。
物件確保のお手伝いをし、私の支援で物件を確保した方に対して、「週に1回の安否確認の電話」と「月に1回の定期訪問による生活状況の確認」を行います。
「入居制限の理由」についてもう一度グラフをご覧ください。
グラフを見ると「入居制限の理由」の中に「居室内での死亡事故などに対する不安」というものが入っています。
週に1回の電話と月に1回の訪問では事故を完璧に防ぐことはできません。しかし、日々の関りの中で体調変化の予兆などを拾っていくことで少しでも事故の確率を下げることができると思っています。
事実私が支援した方の中でオーナーさんから、「そんな事業で支援してくれているのであれば」として入居審査を通過した例がいくつもあります。
しかしながら、まだまだ事業としても社会問題としても認知度が高くありません。
日本はすでに超高齢化社会に突入し、今のところ改善が見込まれる様子もありません。5年後には団塊の世代が後期高齢者(75歳)となる「2025年問題」も控えています。
私はこの問題をより多くの方に知ってもらいたいと考えています。
地域共通の社会問題として
支援施策でできることには常に限界があります。
一人の人間ができることにも同じように限界があります。
同じ時代・同じ地域で生きる人々が高齢者であっても障害があっても共生できる社会を作っていくためには
色々な立場から力を持ち寄っていく必要があります。
「自分は高齢者ではない」
「住む場所に困っていない」
そんな人たちに少しだけ力を貸して欲しいのです。
周りに困っている人はいませんか?「こんな時にどこに相談すればいいか、誰に相談すればいいか分からない」という方はたくさんいます。
私たち専門家に「こんな人がいるよ」と教えてください。
誰もが暮らしやすい社会を作っていけるよう尽力して参ります。
今回の研修を通じて私自身も高齢者の住居問題について、社会資源が互いに連携し合っていくことの必要性を実感し、参加していただいた福祉関係者の方々にも新たな認識や問題意識を持っていただけたと感じております。
最後になりましたが当日ご多忙の中、多くの方々に参加していただけたことと、貴重な機会を設定してくださった建築調整課・高齢福祉課の皆様に厚くお礼を申し上げます。
大田区支援付きすまい確保事業 相談員 米澤 由得