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【すまい確保】戸籍にまつわる豆知識

 夏も本格的になりましたね。

私の担当する「大田区生活支援付すまい確保事業」では、週の半分くらいは自転車で利用者さんの家を周るので毎日汗だくです。

 こんなに頑張って毎日自転車を漕いでいるのにどうして痩せないんだろう?

もしかしたら日光からカロリーを摂取できるニュータイプになったのかもしれません。

 こんにちは 米澤です。

 

 以前のブログにも少し書きましたが、私の業務には「生活支援」というものがあります。福祉事務所のケースワーカーさんや、包括支援センターの支援員さんほど専門的ではありませんが、高齢者さんの日常の困りごとに対して助言やお手伝いをさせてもらっています。

 

 たいていの相談は福祉職としての知識や、社会人経験からお答えすることはできるのですが、普段あまり接することのない社会的な手続きになると途端に難しくなります。

 

 その中で特に難しいのが「戸籍」に関する知識です。普段の生活の中で「住民票」なんかは携帯電話や賃貸物件の契約で使うこともありますが、「戸籍謄本(とうほん)・抄本(しょうほん)」となると「結婚」の時に関わるかなーって程度が概ね一般的だと思います。

 

 


 ただ、福祉の業界に身を置いていると、この「戸籍」との関りが他の業界の方に比べて結構多いんです。もちろん専門的な対応などは弁護士や司法書士の先生方にお繋ぎするのですが、私たち福祉職は「生活相談の最初の窓口」となることが多いため、「戸籍」についてご質問を受けることもしばしばです。まぁ専門的な話を素人の私がしてもブログとしてはつまらないので、今日は「戸籍にまつわる豆知識」みたいなことをいくつかお話ししようかなと。

・日本最古の戸籍って?

 現在の戸籍とは当然異なりますが、日本最古の戸籍とされるのは福岡県で出土した「戸籍のような木簡」が最古の物と考えられているそうです。5世紀頃のものらしいのですが、そこに記載された人々の子孫が今でも日本で暮らしていると考えるとロマンがありますね。もしかしたらこのブログを読んでいるあなたのご先祖様かもしれませんよ?

 


・海外にも戸籍制度はあるの?

 世界的に戸籍制度が設けられているのは日本・中国のみです。以前は韓国も戸籍制度を採用していましたが2007年頃に廃止しています。

 ちなみにアメリカでは「社会保障番号」というものがあり、家族を1単位とする戸籍とは異なり、個人を基本として管理されています。日本でもマイナンバーが施行された際に戸籍の撤廃論が検討されました。近い将来、戸籍は日本でも無くなってしまうかもしれませんね。


・家系図を作りたい!!

 まず戸籍ってどれくらい遡れるのでしょうか?戸籍謄本の保存期間は原則、2010年の法改正から「死亡してから150年」と定められるようになりました。ではその前はというと、2009年までは「死亡から80年」経過すると廃棄されています。つまり1929年の時点までに死亡した方の戸籍は概ね廃棄されていると考えて問題ありません。ただし自治体によっては保管されていることもあるので確認すれば発行してもらえることもあります。

 

 では一から「家系図」を作りたいときはどうしましょう。一般的によほどの名家でなければ家に家系図なんてものはありません。あってもせいぜい明治時代頃まで。私も興味を持ったことがありますが、どうやら我が家は明治維新の際に四国から開拓民として北海道に移ってきた・・・ぐらいしか分かりませんでした。これには戸籍の保存期間という弊害に加えて戸籍制度そのものが明治維新以降の行政制度・戸籍法の確立に端を発していることに由来されます。

 じゃあ武士や旧貴族みたいな名家以外は家系図を作れないの?ご安心ください、まだ道は残されています。それが「人別帳」正式名称を「宗門人別改帳(しゅうもんにんべつあらためちょう)」です。これは江戸時代の中期頃に「税の徴収」と「庶民の宗派」を調査する名目で編纂された物で、主にお寺が管理を行っていた「現在でいうところの戸籍」にあたります。これを調べるとご先祖様の名前や家族構成などが判明します。

 

 た・だ・し どこにあるかは分かりません。その家の菩提寺などを辿っていくと出てきますが、

 

①保管が義務付けられていない

②宗教観の変化により菩提寺と没交渉

③そもそも菩提寺が戦争や廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)で燃えている

④運よく出てきても読むためには古語の専門家の知識が必要

 

 など課題が積み重なること山の如しです。興味があっても明治時代までで我慢しておきましょう。


・死亡地の記載

 通常死亡した際は最終住民登録地が死亡地とみなされ、自宅・病院を問わず「○○市にて死亡」などと記載されますが、戦争などにより死亡地のおおよその推定はされるが正確な住所が振られていない場合は記載がちょっと異なってきます。私が目にした例では「東経〇〇度、南緯〇〇度 ××沖にて死没」と記載されていました。ご親族の方にお話をうかがうと、当該の方は戦争により南洋に出兵。船が撃沈されたことで亡くなったそうです。

 また、路上で亡くなった方は「行旅死亡人」として亡くなった地点の自治体が死亡手続きを行います。余談ではありますが天涯孤独の方が亡くなった場合、「どこで亡くなったか」によって誰が死亡届の手続きを行うかが異なってきます。路上であれば当該地区の自治体が。居室で亡くなった場合は大家が死亡届を出すことができます。

 


・推定相続人廃除?

 よくドラマや小説で不肖の息子に対して父親が「てめぇなんざァ勘当でい!」というセリフがでてきます。一般的に「勘当」を辞書引くと「親が子に対して親子の縁を切ること」と解説されていますが、その法的効力はどうなっているか。結論を書くと戸籍上での離縁には一定の法的拘束力が残ります。「婚姻」「分籍」などで戸籍から離れることは容認されていますが、親が子に対して扶養の義務を放棄するような「勘当」は認められていません。

 

 しかしながらここで「推定相続人廃除届」という存在が浮かび上がってきます。これは例を挙げると・・・推定相続人(子)が被相続人(父)に対して著しい加害があった場合、ここで言う加害とは肉体的・精神的暴力や経済的な侵害を指します。平たく言うと長年のDVや貯蓄の持ち逃げや使い込みがあった相続人に対して「お前のようなやつには財産は残さねえ」というのを正式な手続きに則って行うものです。つまり廃除されるのは相続権のみであり、親子関係までが否定されるものではありませんので「勘当」とはあくまで当事者間だけのお話ですよ、ということです。


 いくつか戸籍についてのお話をさせていただきましたが、興味を持って読んでいただけたでしょうか?

 あまり具体的な話になってしまうと、相談者さんの個人情報にかかってくることもあるので、今日は「へぇ」と思ってもらえそうな話を紹介させていただきました。

 

 これを読んで「もっと知りたい!」なんて講演依頼がございましたら、「有隣協会 米澤」までご一報ください(笑)

 

大田区支援付きすまい確保事業 相談員

米澤 由得

社会福祉法人 有隣協会 

 

〒144-0055

東京都大田区仲六郷4-2-12

TEL : 03-3738-2563

FAX : 03-3738-9548